「兼業農家」が日本を滅ぼす:日経ビジネスオンライン: " 1970年以降、連綿と続けられてきた減反政策。転作を奨励するために7兆円の国費を投入してきたが、この40年で食料自給率は40%に下落。生産調整の対象になった水田の多くが休耕田になった。昨年、発覚した汚染米事件も、本をただせば減反政策に原因がある。農業関係者の利益のために、水田を水田として利用しない愚行。その制度疲労は明らかだ。これとてもいい内容。ニッポン農業の問題点が網羅されている。農村利権集団のエゴこそ諸悪の根源。
「農協、自民党、農水省」。減反政策と高米価政策を推し進めてきたのは、この鉄のトライアングルだった。そして、その恩恵を最も受けてきたのが兼業農家だった。この生産調整が日本の農業にどのような弊害を与えたのか。そして、今後の農政をどう考えればよいのか。長年、減反政策を批判してきた元農水官僚、山下一仁氏に聞いた。(聞き手は、日経ビジネス オンライン記者 篠原匡)"
抜粋:
- 山下 生産調整でコメの生産を抑制し、高米価を維持する——。これは、一言で言えば供給制限カルテル。ほかの産業であれば、独占禁止法の対象になる行為でしょう。「減反政策はカルテルである」。この点を、最初に強調しておきます。
- 生産者をカルテルに参加させるための何かのインセンティブが必要になります。そのインセンティブが年間2000億円、累計で7兆円に上る補助金でした。
- この7兆円に上る補助金を負担しているのは誰でしょうか。言うまでもありませんが、私たち国民です。しかも、この高米価を維持するために、この国は輸入米に対して高い関税を課している。その代償として、ミニマムアクセスを設定し、一定の輸入米を購入している。昨年9月、米加工会社、三笠フーズによる汚染米の横流しが発覚しました。残留農薬やカビのあるコメを酒造会社などに転売した事件ですが、あのコメも大半はミニマムアクセス米でした。わざわざ腐りやすい精米を長期間保存しているわけですから、カビが生えるのも当たり前でしょう。
- 高米価政策を採ったことで零細の兼業農家が滞留した。ご承知の通り、コメを作るのはそれほど難しくありません。実際のところ、週末だけの農作業でもコメが作れてしまう。そうして作ったコメが高値で売れていくのだから、兼業農家が農地を手放すはずがありませんよね。
- 零細の農家が水田を手放さなかったために、主業農家の規模拡大が難しくなった。規模拡大ができないのだから、コストを下げられない。コストが下がらないからコメを専門にしても所得も増えない。高米価政策の影響を受けたのは主業農家でした。
- 農協の政治的な基盤は圧倒的多数の兼業農家。その兼業農家に減反を強制することは自分たちの政治力を削ぐことになる。まあ、やりませんよね。その代償として、コメを専門に作る主業農家がどんどん不利になっていった。
- 減反政策で一番喜ぶのは農協というわけですか。山下 間違いなく農協ですね。2005年の話ですが、コメ価格センターの入札で価格を押し上げる不正な価格操作を行ったとして、全農あきたが入札停止の処分を受けたことがありました。高い価格で落札させ、卸売業者にリベートを払っていた。高い米価を設定すれば、それに応じて高い手数料を取れるからですよ。
- 与党の自民党にとって、組織された農民票は政権維持の要。その農民票をバックに持った農協は最大の圧力団体になりました。
- 減反政策によって約260万ヘクタールの農地が消滅しました。今の水田面積は250万ヘクタール。今ある水田面積と同じくらいの農地が耕作放棄や転用で消滅してしまった。工場用地や宅地の転用もやったし、公共事業で道路も入った。あるいは病院や学校が作られる。そうして、農地が消滅していったんですよ。
- 農政は言っていることとやっていることが支離滅裂です。農業には水資源の涵養や洪水防止など、農業以外の重要性があると主張してきました。この農業の多面的機能は6兆円ある、と農政は主張している。ただ、その6兆円の3分の2ぐらいは水田の機能なんですよ。水資源の涵養、洪水防止、美しい景観——。これはすべて水田の機能です。ところが、一方ではこの水田をなくす政策を採っている。
- 消費税を導入した時、農業団体は「食品に課税することは逆進的なのでやめるべき」と言っていた。でも、逆進的な米価政策を強硬に主張しているのは当の農業団体なわけです。本音は別のところにあるんですよ。自分たちが日頃していることと、言っていることが100%矛盾しているということに全く気づいていない。
- これまで減反政策にあまり不満がでなかったのは国民が豊かだったことが大きい。コメが少々高かろうが、コメを買えた。ところが、最近になって事情が変わりました。今回の金融危機で相当の失業者が出ることは間違いない。この人たちにとって、高米価は死活問題です。はっきり言って、高い米価を維持する消費者負担型の農政は逆進的。貧しい人ほど、影響を受ける悪い政策なんですよ。
他にもいっぱいあるけれどこの辺で。ぜひ原文を読んで下さい。
5 件のコメント:
専業農家の人たちの人の良さにあぐらをかいている人たちは、困ったものですよね。そろそろ、農家の中から、変り種の天才が現れてくれないものかな。
それと、日本人が説教好きなんだと、今日になって、はっきりわかって、がっくりした。散人さんは、嫌味をいっても説教していないところがいいところだな。
だいたい日本人以外は、説教は教会で飽き飽きするほど毎週のように聞いているから、プライベートでは説教から解放されて、あるがままの自分でいようとしているみたいなのに、とくに、ネットの人たちは、お互いに説教を言い合って、説教から少しでも外れると、理性のかけらもなくなってしまうのには、いい加減、辟易して、つまらない。
私の外国人の弟子は、日本語べらべら(書くしかしらないけど)で、もう日本人より文化表現ができて、こちらが、論理的にも非論理的にもきつくいったとしても、で、ちょっとむかついてほっておいても、必ず、向こうから、先生とメールを送ってくる。ただ、私も説教は絶対に外国人は受け付けないというか、土壌が違うから理解できないだろうから、ただ日本文化の一面を事実としては伝えるけど。
たぶん、専業農家の方々も、わけのわからない説教を信じてしまっているだけなんだと思う。そうじゃなければおかしい。儲からないし、作る喜びがあるって思うのは良いことだけど、それが伝わらないというのは、文化でも技術でもないってことだし。
あと、農業じゃないけど、権力者は海外にでたら、本当に信用がおけるところというか、顔は笑顔でも、あれこれ、口の中に入れたり流したりしてはダメ。調理場で何を混ぜられているかわらないのだから。真相はわからないけど、国際問題に発展しないように国益を守っただけなんじゃないかな。辞任するのに、なんで医者へ行く必要があったのか、まったくわからない。それも、審議を中断して。
ま、世の中、説教で判断するみたいだけどね。
日本ではコメ作とコメ作以外の二種類の農業があります。コメを主食としてきた歴史と減反政策という自民党政治がそうさせたと思います。
列島は長いので、作物生産に向き不向きもあるでしょうから一概には言えませんが、我々の食生活や嗜好の変化に伴って「コメなんかやめてやる!」という元気な農家が増えないものでしょうか。もちろん「美味しいコメ作って外国に売り飛ばす!」でもよろしい。
やりにくさを減反政策の所為にしつつも、それを当てにしている農家が多いのも事実。しかし、そんな親父を見て「元気な農家になるぞ!」と考える子供はいません。
農業も商売、だから面白い!だから苦労もすれば工夫もするぜ!そんな若者が増えることを願ってやみません。
非常に簡単に言えば、ニッポン農業の根本問題は単位面積あたりの農業労働者数が、機械化がなされなかった古い時代のままに据え置かれていて多すぎるのに、一人あたりの農業収入は近代化社会のそれと同じだけ欲しいという経済的に成り立たない生産者側の要求の矛盾から来るものです。だから、日本の農業を復活させようとすれば「担い手」なんかを増やすのではなく「いかにして農業就業者数を減らすか」という観点から政策を考えるべきなのです。それが分かっていない人が多いので、議論はいつまでたっても平行線のまま。
なるほど・・・都市部近郊農家には土地神話の亡霊がいまだに彷徨っていますからね。本当にやる気があるのか、ないのか。農業従事者も国も。
>都市部近郊農家には土地神話の亡霊が
いや都市近郊だけじゃないですよ。「全国平均」で見ても農家の農業生産額より農地譲渡所得の方が大きな金額となっている。ニッポンの農業は今や不動産業。
コメントを投稿